ブックタイトルPOCKET ORCHESTRAL

概要

POCKET ORCHESTRAL

暮らしに息づく、至宝のオイル　ルッカをたとえばイギリスの検索サイトで検索してみると、ホテルや旅情報に混じって、オリーブオイル、ワイン、という単語がちらほら出てくる。ルッカはイギリス、ドイツなどヨーロッパ人にも人気の旅先なのだが、それは十一世紀から十三世紀頃に作られた教会や広場がたくさん残る旧市街の美しく、落ち着いたたたずまいだけが理由ではない。旧市街から外に目を向けると広がる、濃い緑色の低い山並み。ここから生まれる美味が堪能できるからでもあるのだ。　ルッカ、そしてトスカーナ全体でも、オリーブと葡萄が隣り合って広がり、農園も、オリーブオイルとワイン、両方を生産しているところが多い。どちらも、聖書の時代から脈々と息づく、イタリア料理の真髄だ。この二つが美味しければ言うことなし！　ルッカ人の自慢はまずはオイル。権威ある百科事典「オックスフォード大辞典」に書かれていたルッカオイルは、ルッカと周りの大地から生まれる極上のオリーブオイルとワイン。そして素朴で味わい深い料理ルッカの人々の食卓に?欠かすことのできないオリーブオイル?イタリアの食文化に詳しい料理研究家・貝谷郁子先生に寄稿頂きました?たとえばシャンパンのように、地域の名前がそのまま産物の名前になったというネーミング。上質で特別なオイルを指す言葉だったのだという。　そんなオイルを、ルッカでは惜しげなく使う。晩秋から冬のさまざまな野菜をたっぷりオリーブオイルで蒸し、とろとろになるまでじっくり煮込んだスープには、オリーブオイルもまたたっぷり使う。柔らかく煮た豆も合わせ、塩だけの味付けで時間をかけて作り上げたスープは、「オリーブ搾り人のスープ」（ズッパ・フラントイアーナ）と呼ばれるもの。スープ皿によそい、最後にまたオリーブオイルをひとたらしする。さまざまなスープ、煮込みの仕上げで、このオリーブオイルのひとたらし、ひとしずくが料理をひきしめる。　その秋の搾りたての新オイルは、旬の味。塩味のシンプルなパンを軽くトーストして新オイルをたっぷりかけ、塩胡椒を軽くふった「フェットゥンタ」はごちそうの一品だ。香り、味わい、後味を楽しめるオリーブオイルは、日本料理のダシにも匹敵する存在。そんな存在に丹精こめた美味しいワインが華を添える。　古代小麦、栗や栗の粉、豆類、と、長い年月ていねいに作られた穀物や豆類、そしてサラミやハム、チーズ類。どれも、スローフードという言葉ができ無料アプリ「COCOAR2」をインストールして誌面にスマホをかざすと動画をご覧いただけます。人口／90,136 人面積／185.38 ?※2019年11月写真提供：貝谷 郁子▲ 収穫作業中のオリーブ。ルッカの農園にて。